マーケティング担当者なら必ず知っておきたい”行動経済学”の基礎

事業計画

インターネットの普及した今、多くの企業では“マーケティング”を重視したビジネス戦略を行っています。このマーケティングを知る上で、必ず知っておきたい“学問”があります。それが「行動経済学」です。人間の経済行動を分析した学問のことですが、実は行動経済学を知っておくだけで、マーケティングセンスが飛躍的に上がるのです。そこで今日は、マーケティングに不可欠とされる「行動経済学」についてまとめていきます。

■もくじ
1.そもそも“行動経済学”とは?
-経済学との違いについて知る
-行動経済学がマーケティングに活かせる理由

2.行動経済学の基礎知識
-プロスペクト理論
-現在バイアス
-ヒューリスティックス

3.マーケティングでは“ナッジ”が使える
-“ナッジ理論”とは?
-マーケティングでの活かし方

4.まとめ

■そもそも“行動経済学”とは?
そもそも“行動経済学”とは、どんな学問を指すのでしょうか?ここでは、経済学との違いとマーケティングとの関係性について見てみます。

-経済学との違いについて知る
行動経済学とは、経済学をベースに心理学的な要素を取り入れた学問のことを指します。その違いは、「想定する人物像」です。経済学では、賢く完璧に自己管理できる合理的な人物を想定しています。計画したことは必ず遂行したり、お金の無駄遣いをしなかったりする人物を想定しています。一方で行動経済学は、賢く完璧に自己管理できない非合理的な人物を想定しています。なぜか計画倒れしてしまったり、使いたくないのにお金を使ってしまったりする人物を想定しています。つまり行動経済学とは、人が社会生活を送る上で、どのように損得を考えて行動するかを研究する学問だったのです。

-行動経済学がマーケティングに活かせる理由
ではこの行動経済学が、なぜマーケティングと関係してくるのでしょう?答えは私たちの生活の中に、すでに定着しつつある「インターネット」にあります。買い物、ニュース、地図、娯楽など、私たちの生活はインターネットなしでは成り立ちません。マーケティングにおいて、とりわけ関係してくるのが、オンラインショップです。オンラインショップではユーザー層の増加に伴い、利用デバイス、利用シーンが年々拡大しています。コロナ禍によって、生活が在宅中心へと変わったことでオンラインの利用率も加速しました。このような状況で、ユーザー1人ひとりの心理や状況に合わせてパーソナライズした接客やコミュニケーションが求められており、そこにコミットするのが行動経済学だったのです。

豚の貯金箱

■行動経済学の基礎知識
行動経済学には、一体どんな理論があるのでしょうか?行動経済学の理論を知り、私たちの中にある合理的な行動を拒む、様々なバイアスについて理解します。

-プロスペクト理論
プロスペクト理論とは、人間は与えられた情報から、期待値に比例してものごとを判断するのではなく、状況や条件によって、その期待値を歪めて判断してしまうというものです。代表的なのは「損失回避」です。例えばこんな質問があったら、どちらを選びますか?

A コインを投げて表が出たら1万円もらい、裏が出たら何ももらえない
B 確実に5000円もらう

おそらくほとんどの方が、「B」を選ぶでしょう。では、次のような選択肢ではどうでしょうか?

C コインを投げて表が出たら1万円支払い、裏が出たら何も支払わない
D 確実に5000円払う

ほとんどの方が、「C」を選びます。最初の選択は5000円の利得であり、次の選択は5000円の損失です。利得局面では確実な方を選び、損失局面ではリスクが大きい方を好む傾向があるのです。人は利得よりも、損失を嫌う性質があったのです。

-現在バイアス
現在バイアスとは、将来に得られる大きなベネフィットと、今すぐに得られる小さなベネフィットを天秤にかけて、小さなベネフィットを選択してしまうという人間の心理を指します。一番わかりやすいのが、「ダイエット」です。ダイエットは、将来に得られる理想的なカラダといったベネフィットのために、甘いものを我慢したり、つらい運動をしたりするものです。ダイエットが挫折してしまうのは、理想のカラダより、甘いもの食べてつらいことから逃げてしまう「小さなベネフィット」を選択してしまうことが原因です。ダイエット失敗の多くは、この「現在バイアス」にあったのです。

-ヒューリスティックス
ヒューリスティックスとは「直感的意思決定」のことで、直訳すると「近道による意思決定」となります。代表的なのは、「サンクコストの誤謬」です。経済学では、すでに支払ってしまう回収できない費用のことを「サンクコスト」と呼びますが、取り戻すことのできないサンクコストを回収しようとする意思決定を「サンクコストの誤謬」と呼びます。例えば、スーパーマーケットでは、閉店時間に近づくと大幅に割引されることが多いです。一見、損をしているように見えますが、そのまま売れ残って処分するのと、安くして売れるのでは、どちらが利益が大きいかを意思決定しているのです。これが「サンクコストの誤謬」で、店はそのまま廃棄処分して利益を取り戻せないより、少しでも利益を出る方を優先したのです。

行動経済学

■マーケティングでは“ナッジ”が使える
私たち人間には、ここまで紹介してきたような“バイアス”があることがわかりました。このような意思決定の歪みを、行動経済学的特性を用いて、よりよいものへとする考え方があります。それが「ナッジ理論」です。

-“ナッジ理論”とは?
「ナッジ理論」とは、米シカゴ大学経営大学院教授、リチャード・セイラーが提唱した行動経済学の理論を指します。「ナッジ」とは、「ひじをつつく」「背中を押す」といった意味です。相手を強要するのではなく、ひじでつつくようにして、自然なかたちでよい方向へ誘導させるための考え方が、「ナッジ理論」です。この「ナッジ理論」で、まず知っておきたいのが、ナッジ理論の重要な要素を表した「EAST」です。「EAST」とは、「Easy(簡単)」「Attractive(魅力的)」「Social(社会的)」「Timely(タイムリー)」の頭文字を取ったものです。

「Easy(簡単)」…面倒臭がりなので、簡単で楽な行動を選びたくなる性質
「Attractive(魅力的)」…自分にとって魅力的な行動を選ぶ性質
「Social(社会的)」…社会のルールや他人の目を気にして同じ行動をしたくなる性質
「Timely(タイムリー)」…タイミングによって行動が変わる性質

人間には、このような性質があることを前提として、マーケティングに活かしていきます。

-マーケティングでの活かし方
では実際に、マーケティングに活用する場合、一体どんな方法があるのでしょうか?一番よく活用されているのが「デフォルト効果」です。デフォルト効果とは、「初期設定」に従ってしまう心理的傾向のことを指します。ある一つの決定事項に付随するオプションや、選択肢そのものの可否を答える場合などにあらわれる意思決定です。

例えば、オンラインショッピングで商品を買うとき、決済ページで「当ショップからの情報のメールを受け取りますか?」という質問があり、「はい」にすでにチェックが入っているのを見たことはありませんか?これは、「はい」か「いいえ」のどちらかを選ぶという手間を省略しています。初期設定で、あらかじめ選んでほしい方をチェックしておけば、同意される確率が上がるからです。

■まとめ
行動経済学についてまとめました。わたしたち人間はどんな場面においても、合理的に意思決定しているように思えます。しかしその多くは心理的な「歪み」があり、非合理的な結論を下してしまうのです。この性質を前提としつつ、マーケティング戦略を行う必要があります。選択肢の多い時代において、“ナッジ”のように自然なかたちで誘導してあげることが、結果を生み出す秘訣だったのです。

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